農業コラム

  • 日本農業
  • 2021年05月19日

【日本農業の現状と未来⑫】第4章:農産物の輸入 その4

第12回 国別農産物輸入量 肉類 米

皆様、こんにちは。コロナ禍での2回目のゴールデンウイークも終わりました。
昨年は「来年のゴールデンウイークにはいくらなんでも新型コロナウイルスは収束しているだろう。」なんて思っていたのは私だけではないでしょう。
4都府県への緊急事態宣言も愛知、福岡の2県が追加されて5月末までの延長となりました。


暗い話題が多い昨今ではありますが、さあ、前を向いて進んで行きましょう。

第12回は肉類と米の国別輸入状況を確認していきます。最後までお付き合い、お願い致します。

牛肉の輸入状況

出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「農林水産物輸出入統計」
   (https://www.e-stat.go.jp/)
(以下 グラフ12-8 まで)

輸入される総重量は野菜での1位の玉ねぎの2.2倍 金額では27.2倍です。第7回 表7-1や第10回 表10-4にありますが、国産量よりも輸入量が大きいです。国内消費量の約60%が輸入牛肉です。

輸入国はオーストラリアとアメリカで全体の86%以上を占めています。表12-1はランキング19位まで列記しましたが、上位17カ国で輸入量のほぼ100%です。
アメリカ牛肉は脂肪が適度についていて、オージービーフは赤身が多いことが特徴であることは皆様もご存じでしょう。
肉質の違いはBSE問題でアメリカ産牛肉の輸入停止の時、牛丼チェーンの吉野家が牛丼販売を停止した理由でもあります。
第1位と第2位の国が入れ替わることがあるのならばそこは需要と供給の問題だけではなく、政治が絡んでくることは容易に想像がつきます。
2020年に合意された日米貿易協定の影響は必ず牛肉輸入のシェアに出てくるでしょう。

豚肉の輸入状況

輸入総量は牛肉の1.5倍強 金額では1.3倍です。国内産と輸入品の消費量はほぼ同じです(第7回 表7-5)。
「豚肉ってこんなに輸入されているんだ。」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。確かに近年、スーパーマーケットではカナダ産をよく見かけますし、イベリコ豚はスペイン産ですよね。

冷蔵で輸入される豚肉はアメリカ産とカナダ産で約90%を誇ります。加工・業務用となる冷凍品としてスペイン・デンマーク・メキシコ産が輸入されています。2013年の財務省 貿易統計によるとデンマークはアメリカ・カナダに次ぐ輸入第3位でありましたが、スペインに抜かれメキシコにも追いつかれそうです。デンマークは生体豚(子豚)の輸出量が増加しているため、デンマーク国内の肥育豚頭数が減少しているという現象が発生しています。

鶏肉の輸入状況

鶏肉の国内生産量及び輸入量の推移については第7回 表7-8を参照ください。輸入の割合としては肉類の中でも小さい部類ですが、量は年々増加しています。

輸入第1位国はブラジルで総量の75%を占めています。2位のタイについては2013年からタイ産鶏肉の輸入が解禁されると増加傾向で推移してランキング2位にまで躍進しました。
とは言えなぜブラジルからの輸入が多いのでしょうか?
答えは鳥インフルエンザにありました。ブラジルは鳥インフルエンザの空白地帯なのです。逆に牛肉・豚肉と比較した場合、アメリカ産鶏肉はもっと輸入されていておかしくないと考えるのですが、鳥インフルエンザの発生でアメリカからの輸入停止措置が(ある程度の頻度で)とられることがあったからです。
安定供給を考えると安価で安全性の高いブラジル産鶏肉を選択すると言うことなのでしょう。


上記肉類については食肉調製品(牛肉:コンビーフ等 豚肉:ランチョンミート 鶏肉:サラダチキン・フライドチキン等)は統計に含まれていないことを付け加えておきます。

米の輸入状況

米の輸入について触れることにしましょう。政治が絡む部分が多く書きたい題材ではないのですが、避けては通れません。

米はもともと輸入が認められていなかった農作物です。1942年からの食料管理制度では国産米は原則、全量を政府が買入していたのです。しかも買上げ価格は世界でもずば抜けて高い水準なのでした。つまりは政策なのでした。
諸外国は日本政府の対応に批判を強め、米輸入を要求することは当然の流れだったのです。
そんな時に「平成の米騒動」が起きるのです。第3回第4回でも少し触れましたが1993年の記録的な冷夏によって米不足に陥るのです。政府は備蓄米40万トン全てを放出しましたが、全く不足してタイや中国、アメリカなどから米の緊急輸入を行いました。
その量、259万トン。もう「米は輸入しません。」は通用しなくなったのです。
そして1995年にガット・ウルグアイラウンド農業合意を受けて米輸入の機会提供をすることとなるのです。
その後の輸入米をミニマム・アクセス(MA)米と言うのですが輸入数量は2000年度以降は76.7万玄米トンで固定となっています。年間259万トン輸入した実績があるのに僅か76.7万玄米トン。問題解決となる数量とは考えにくいです。

MA米の話だけで1回分文章書くことになってしまうのでこの程度にて切り上げます。輸入米の統計が1995年度以降しか存在しない理由は上記にあります。
TPPやEPAについては今後、書かざるを得ないでしょう。


米は輸出もしています。2017年統計では8,436トンです。金額にして23億円。米+米加工品では183億円です(米加工品:米菓・日本酒)。
この数字は今後拡大していくことでしょう。

第12回の終わりに。
「平成の米騒動」みたいなことが起きるのです。生まれてきてこんなことが起こるのかと思った天災「東日本大震災」「阪神淡路大震災」、昨年来の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大」、それに次ぐくらいの衝撃的な出来事でした。
日本の米が食べられない。そんなこと1度もなかったからです。米不足では日本人が死ぬことはなかったけれども、タイでは米価格の高騰により餓死者も出たのです。

予期せぬことも起こりうる。しかし、不安に思っているだけでは前には進めない。出来ることを全力で行うことが大事。


では皆様、この辺で。次回、またお会いしましょう。バイバイ。

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