農業コラム

  • 日本農業
  • 2021年04月05日

【日本農業の現状と未来⑩】第4章:農産物の輸入 その2

第10回 輸入量の多い野菜 その1

皆様、こんにちは。大分暖かくなってきましたね。日中はちょっと動くだけで汗をかいたりします。
桜満開のところも多いでしょう。私の家の近くも満開です。昨年に引続き自粛モードでの花見になることが少し悲しい。
営業職の頃は道路脇に桜がたくさん咲いている道を選んで得意先に向かったものです。
満開の桜の下を走るとなんか楽しくて「ずっと咲いてりゃいいのに。」なんて思っていました。

さて、第10回は輸入量の多い野菜について取り上げていきます。
前回までに穀物の輸入量、肉類の輸入量には触れてきました。
野菜の輸入となると何となくピンと来ない感じがするのではないでしょうか。

輸入野菜はどんな形で入ってくるのでしょう。

野菜の輸入について

出典:高知県ホームページ「高知県農業の動向(令和2年度) 13その他 8.野菜の輸入状況(輸入状況の推移)」より引用

生鮮野菜として入ってくる量と加工品で入ってくる量ではやはり、加工品の量が多いですね(グラフ10-2)。
2005年のデータが輸入量のMAXである理由はやはり、2004年の冷夏の影響で国産野菜の生産量が減少したと考えることが妥当でしょう。
トマト加工品が増加傾向ですね(グラフ10-3)。ケチャップやピューレ等を指します。イタリアンの外食産業の店舗増加などが考えられますね(サイ〇〇アとか)。
冷凍技術の進化からなのでしょう、冷凍野菜は増加、塩蔵野菜・乾燥野菜は減少しています。


野菜が輸入されてくる「カタチ」は分かりました。
では次に輸入量の多い野菜のランキングと国内生産量を見てみましょう。

野菜の輸入ランキング

出典:野菜情報サイト野菜ナビ「野菜統計 野菜輸入ランキング」より引用
   政府統計の総合窓口(e-Stat)「作物統計調査」「地域特産野菜生産状況調査」
    (https://www.e-stat.go.jp/)
   税関ホームページ(https://www.customs.go.jp/tariff/2020_10/index.htm)

出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「農林水産物輸出入統計」「作物統計調査」
    (https://www.e-stat.go.jp/)
   農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/)
   税関ホームページ(https://www.customs.go.jp/tariff/2020_10/index.htm)

表10-4を見てください。関税についても併せて表記しました。
輸入量としては玉ねぎがNO.1です。皆様の予想通りとなりましたでしょうか。
もちろん国内の消費量との兼合いがあっての数字ですので、量のみでランキングの傾向の共通性を見出すことは難しいです。
傾向としては生鮮野菜として輸入する場合は、やはり実が固く輸送に耐える野菜とか日持ちの良い野菜はランキング上位に入りやすいようです。

輸入の比率から見ていくとパプリカ 87%、にんにく 60%が高いです。パプリカについては皆様の想像の範囲だったのではないでしょうか。私見ではにんにくの高比率は意外でした。また、かぼちゃとごぼうは和食材料であるのに、こんなにも輸入比率が高いとは思いませんでした。国内での生産性との関係があると考えられます。
参考で肉類と穀物も表記してみましたが、野菜は輸入量の比較的少ない農産物であると言えるでしょう。


それでは個々の野菜について検証してみましょう。
表中のWTOの欄に”〇”がある場合はWTO加盟国です。欄外のEPAについては日本とのEPA条約を結んでいる国です。
WTO・EPAについては後に記述していきます。

玉ねぎ

出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「農林水産物輸出入統計」
   (https://www.e-stat.go.jp/)
   (以下 グラフ10-10 まで)

玉ねぎについては輸入量の93% 輸入金額の91%が中国です。
玉ねぎの輸入量は増加現象にあり、国内産価格の上昇から単価の安い輸入品が増加しています。
輸入玉ねぎは主として加工・業務用需要が多いです。確かにスーパーマーケットでは輸入玉ねぎを見ることはありませんので、市場を通さない業務用(外食産業用)が多いのでしょう。29万トンも輸入されているとは思いませんでした(表10-4)。

にんじん

中国からの輸入量が93%と玉ねぎと同じで、ほぼ中国から輸入しているのがにんじんです。
供給量は国内産の方が多く国産100に対して20程の割合でしす。野菜ジュースやにんじんジュースでの輸入が多いようです。

かぼちゃ

輸入量ではニュージーランド 55%、メキシコ 40%ですが、輸入金額ではメキシコ 49%、ニュージーランド 46%となっています。かぼちゃについてはこの2国からの輸入で95%の量を占めています。かぼちゃの輸入比率は高いです(表10-4)。
かぼちゃの国内生産量は北海道で9.7万トンの出荷量です。ニュージーランドとメキシコからの輸入量合計9.1万トンですのでこれは大きな数字です。
ニュージーランドは南半球であるため、国産のほとんど出回らない2~4月の需要対応のようです。メキシコも同じ現象なのですが、ニュージーランド産の収穫初期と終期12月・1月・5月の輸入が多いです。メキシコ産が高品質なので単価でニュージーランド産を上回っています。

かぼちゃの出荷量は1973年 16万トン、1989年 21.5万トン。現在に至るまで緩やかな減少傾向ではありますが、冬であってもかぼちゃを食べる食習慣が定着したことや、プリンなどのスイーツとしての素材、洋風料理の素材としても需要があるため輸入量も増加したと考えられています。
メキシコとのEPAもあり関税0であることも輸入量増加に影響がありそうです。

だいぶ長くなってきましたね。第10回はこの辺りで終わりにしましょう。


次回は今回の続きとなります。
輸入量の多い野菜の輸入せざるを得ない理由を交えて書いていきます。

それでは皆様、お元気で。次回も読んでください。

当ウェブサイトでは、お客様の利便性の向上およびサイト改善のためにクッキーを利用しています。
クッキーの利用にご同意いただける場合は、「同意する」ボタンを押してください。
詳細につきましては、クッキーポリシーをご確認ください。

同意する