農業コラム

  • 日本農業
  • 2021年03月01日

【日本農業の現状と未来⑧】第3章:農産物の生産量 その5

第8回 飼料の供給量推移

皆様こんにちは。
新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりましたね。接種の順番は医療従事者から始まり65歳以上の高齢者です。この時点で約4,000万人の方々が接種させることとなります。その後の順番の方々(私も含まれます)が接種する頃には、日本国内でのワクチンの有効性がどの程度かはデータとして見えることでしょう。
イスラエルでは2月上旬で360万人が1回目の接種を完了し、内222万人が2回目接種を完了しました。その有効性は93%と推測されているようです。
日本での有効性もこのような高い数字であると私は信じたいです。
接種に不安を持たれている方もいらっしゃると思いますが、コロナ後の世界はこのワクチン接種から始まっていただきたい。と願う今日この頃です。


今回は畜産飼料の供給量推移から農業を見てまいります。カロリーベース総合食料自給率の数字の謎が解けるはずです。
例によって資料から確認してまいりましょう。

飼料作物

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h21_h
   /trend/part1/chap3/c3_02.html)

ここで今まで触れてこなかった単位があります。そちらの説明から始めましょう。

可消化養分総量 (英語:Total Digestible Nutrients;TDN)
飼料の栄養価の指標となるもので、畜産学等において飼料中の可消化養分(消化、吸収される養分)の単位当たりのエネルギー量から求められる。
可消化養分総量は代謝エネルギー(ME)にほぼ匹敵するものとして用いられている。
TDN(kg)= 可消化粗タンパク質 (kg) + 2.25 × 可消化粗脂肪 (kg) + 可消化粗繊維 (kg) + 可消化可溶性無窒素物 (kg)
TDN1kg = 4.41 Mcal DE (DE:可消化エネルギー)
飼料の栄養価を表す際には飼料中のTDN含量 (%)で表され、単位飼料中のTDN量から求められる。
引用:フリー百科事典 ウィキペディア(URL: http://ja.wikipedia.org/)「可消化養分総量」更新日付:2011/7/5

消化されずに排泄する部分にもエネルギーはあるので、その部分を省いて考えましょうということです。私もこのコラムを書かなければスルーしている単位です。第3回「食料自給率って何?」の表3-1の注記にTDNはあったのですが、その時点で触れると話がややこしくなるためにあえて触れませんでした。お待たせしてごめんなさい。


表8-1からグラフ8-4の資料を見ていると、確かに作付面積・生産量ともに減少してはいるけれどそんなに大きく変化しているようには見えません。
しかし、問題は表8-5以降の資料です。

粗飼料と濃厚飼料

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h24_h/trend/part1/chap3/c3_5_19.html)

表8-5の注記にもありますが、ここで粗飼料と濃厚飼料とは何が違うのか確認しておきましょう。


粗飼料
牧草、稲わら、乾草(牧草を乾かしたもの)、サイレージ(飼料作物を乳酸発酵させたもの)など、草あるいは草をもとに作られたエサのこと。
牛にとっては主食にあたり、栄養源となる他、消化機能を安定させます。

濃厚飼料
穀類(とうもろこしや大豆、麦等)や、ぬか(糠:ふすま(小麦を製麦するときにできる皮のくず)、米ぬか等)などを粉末状にしたり圧ぺん加工(蒸気で加熱し押しつぶして外殻を割ること)したエサのこと。
エネルギーやたんぱく質が豊富に含まれ、牛にとっては主菜にあたります。

粗飼料については2011年度の統計においても約80%が国産で賄えています。牧草やイネ科の植物であるため国内でも栽培調達されています。
1980年度以前の資料には輸入粗飼料の統計が入っていません。数値で表すことが難しかったというよりは、無視できる程度の小さな数字だったのだろうと私は推測します。

問題は濃厚飼料です。第3回「食料自給率って何?」で記したように、飼料自給率は2018年度時点において25%なのです(表3-1)。

同じく第3回で小麦・大豆の自給率も非常に低いことを書いてきました(表3-6)。また、第5回「農産物の生産量推移」においては表5-8の13位 スイートコーンの生産量のみ報告しました。
このあと輸入量について書いて行きますが、国産とうもろこしにおいては飼料用の括りでの生産量はどこにも資料が無いのです。つまり、国産とうもろこしはヒトが食べる分だけで牛や豚には食べさせられないのです。

国産濃厚飼料は2018年度においてその供給量は12%に過ぎないのです。
日本の食料自給率においてカロリーベース総合食料自給率が30%台である理由はまさにここにあるのです。
生産額ベース総合食料自給率でも輸入飼料での畜産物は除外していますが、カロリーにおける食肉の割合は野菜と比較して大きくなることは想像に難しくはないですよね。
穀物においても、ヒトが食べる小麦もそのほとんどは輸入品であることは既に述べてきました。
カロリーが高い食品の多くが輸入に頼っている事実から、カロリーベース総合食料自給率はどうしても低い数字となるのです。

第3回 表3-5を振り返ってみましょうか。カロリーベース総合食料自給率の高いカナダやオーストラリアは、穀物を輸出しているうえに食肉も輸出しています。自国で飼料が調達できるので畜産も盛んなのです。
農産物輸出世界第2位のオランダは生産額ベース総合食料自給率は117%なのにカロリーベース総合食料自給率では69%まで下がるのです。
この様な現象は総合食料自給率の計算において、カロリーベースと生産額ベースでの基本となる数字が異なるから発生しているのです。


何故、農林水産省は食料自給率をカロリーベースと生産額ベースの2つに分けて発表するのでしょうか。個人的にはいろいろと言いたいことはありますが、ここでは政治的な話題には触れません。
でも敢えて世界から見て不利に見える数字を発表する理由は見当たらないと考えています。

第3章は今回にて終了となります。皆様方に農業生産の現状が少しでも分かってもらえた文章になったでしょうか。

第1章から第3章までで日本農業は頑張っていますと私は言いたかったです。そして世界の中においても胸を張れる農業なのだと伝えたかった。
なによりも日本の農業従事者の方々は食を守るために、高齢化にも負けずにその少ない人数で従事されていることを知って欲しかった。

本コラムはまだ続きます。第9回以降しばらくは農作物の輸入について書いていきます。
弊社、農業部門は施設園芸に使用する機材の販売が中心です。現在はトマトのハイワイヤー栽培用の高所作業車を多く販売しています。
以前連載させて頂いた「いちご日記」ではアイポットを中心としたいちご育苗資材、栽培槽を中心としたいちご本圃資材の販売についても触れてきました。いちご高設栽培用プランターにおいては国内で最大シェアを誇っています。

第9回以降は野菜を中心として文章を作っていきます。
第8回は資料と飼料でめんどくさい文章になってしまいましたね。スミマセン。

今回、少し感情的になってしまいました。「お前の考えおかしい。」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まぁ十人十色ですのでお許しください。

それでは次回「第4章:農産物の輸入編」をお楽しみに。お元気で。また、読んでね。

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