いちご日記

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  • 2020年09月03日

暑いハウスからお届けします(2020年8月) 

こんにちは。
立秋を過ぎてもお盆を過ぎても暑い日が続きます。皆様、お元気でしょうか。
先日、静岡県浜松市にて国内史上最高気温と並ぶ 41.1℃を観測しましたが、長い梅雨が明けたと思えばこの暑さ。
人にも、いちごにも、良いわけはありませんよね。
まだしばらくは続きそうなこの暑さにしっかりとした対策と休養をとって乗り切っていきましょう。

前回の予告通り、夜冷育苗とパネル上げについて書いていきます。
夜冷育苗と言えばこの方、静岡市清水区のS様の圃場からお送りいたします。
時期は8月のお盆を過ぎた中下旬の午後です。今日も暑い。

いつもの駐車スペースに車を止めて歩いて行くと、S様、奥様、お嬢様、お三方で休憩中です。暑い盛りです。
こまめな休憩・水分補給は外仕事では必須です。
お忙しい中、時間を割いて頂いて申し訳ありません。本日もよろしくお願いします。

夜冷庫に目をやると今年は寒冷紗が掛かっています。昨年はなかったよなぁ。(2019年10月11日 アイポットを使った夜冷育苗編 参照)

「こんなに暑けりゃ、寒冷紗掛けなきゃ苗もおかしくなっちまうわ。」とS様。確かにその通りです。

いやいや、しかしいつもながらの綺麗な苗です。右側手前が”きらぴ香”、左側に少し見えるのが”章姫”です。S様は今作もこの2種類を栽培されます。
そして、夜冷育苗と普通育苗の2通りで苗を作っています。
事前に訪問することを電話でお伝えした時、今作はあまりうまくいっていないようなことをおっしゃっていましたが、そんなことない。本当に毎年すばらしい苗です。

夜冷育苗がなぜ必要となるかは以前に書きました。また、全ての品種が夜冷で絶大なる効果があるわけではありません。定植する本数にもよりますが夜冷庫があるならば、やはり使用されるべきではないでしょうか。
夜冷庫を使うことによって増える作業がでてくることもあります。最近はなるだけ手を掛けない栽培がいちごでも他の農産物でも考えられています。しかし、手間を省けば出来上がったモノのクオリティは下がると私は考えています。それは農業のみならず我々の仕事も然りです。
何度も書いていますが、この日記で取材させて頂いている生産者様は皆、日々工夫をされています。本当に頭の下がる思いです。

ここで品種について少し余談です。JAでの共販の場合、そのJAで決めた品種しか出荷できません。”紅ほっぺ”と”きらぴ香”は出荷できるけれども”章姫”は出荷できないという場合もあります。共販ですから、JAとしても品種を絞って量を多くして出荷することによりブランド力を付けて市場での価格を優位にすることは当然のことです。また、その方法によって高価格で販売できるのであれば、生産者様にもメリットはあるのです。
ただし、”章姫”を手に入れることは静岡在住の私であっても20年前に比べると難しくなりました。
私はJAの共販の体制に文句を言っているのではありません。好きな品種を食べられなくなることは寂しく感じるだけです。もっとも、このような出荷体制はいちごだけではありません。ほとんどの農作物の系統出荷がこのような傾向です。

話を戻しましょう。

いちご栽培においてこの時期はランナーからの切離し⇒仮植作業が中心となります。しかし、重要なことは苗への潅水なのです。適当に水をかければ良いのではありません。
潅水量や回数、時間が関係します。間違えれば苗の生育に重大な問題が生じることは少なくありません。
親株から切り離すことは、イコール親株から水分も養分も供給されなくなるのです。
切り離せばポットにも肥料は必要になります。固形肥料を使用する場合、水を掛けなければ肥効はありません。どの程度の成分の肥料を使用するのか。どれだけ水を掛けるのか。苗が肥えすぎて病気が発生しやすくなることは避けたい。しかし、肥料不足は芯どまりの危険もある。炭疽病(タンソ病)が怖くない いちご生産者はいないでしょう。経験と知識、新しい薬剤の情報を仕入れることができない(それだけではありませんが)ととても農業は継続できないでしょう。

以前、アイポット育苗でのメリットとしてパネルの集水機能について記したことがあります。この暑い時期に潅水作業は1回1時間以上掛かる生産者様は少なくないはずです。2回ならば2時間以上になるのです。パネルの漏斗機能はこの時間節約にとって大きな役割を果たしているのです。その効果は販売をしている我々、矢崎化工の人間よりもいちごを作っておられる方々がよっぽど理解して頂いています。ありがたいことです。

パネルはどうなっていますでしょうか。
こちらの育苗ハウスにも寒冷紗が掛かっています。暑さと日射量の対策を取られています。
ハウスの中も暑いのだけれど外よりはずっと涼しいです。

ランナー切離しからパネル上げが最終段階に入っています。多分、本日中には切離しは終了するのでしょう。さっきまで水掛していたのに仕事が早いと言うか段取りがいいというか見習いたいものです。
右のパネルの写真、実はランナークリップは昨年お伝えしたS様お手製の被覆線のものでした。ランナーの発生順番を切離しした後でも目視できるようにランナークリップの種類(ここでは樹脂製と被覆線)を分けています。誰が作業しても分かるような工夫をされています。我々のように組織で働いていても「この部分は〇〇さんしか分からない。」ということが間々あるのですが、仕事の効率を考えていれば自然と情報の共有はできる方法を選択するということなのでしょう。
「ランナー押さえるときに”きらぴ香”は少し工夫があるだ。」とS様。よく見ると結構深めに苗を押さえています。”章姫”とは明らかに違う。「深めにしないと根がうまく生えてこないだ。」経験が無ければ出てこない言葉です。前作で何かがあれば今作では即対応される。

S様、奥様、お嬢様、ありがとうございました。
暑い中、全く仕事の邪魔でしかない取材をさせて頂きました。というより何かに託けてS様皆様に私が会いに行っているだけなのかもしれません。
気が付けば今日も2時間近くの滞在になってしまいました。まだまだ暑い日が続きます。どうか無理なさらぬように。また、お邪魔したいと思っております。よろしくお願い致します。

続いて、藤枝市K様の圃場です

育苗状況はどうなっていますでしょう。
伺ったのは8月中旬。今日も暑いです。
本日もお世話になります。よろしくお願い致します。

「おぉ、久しぶりだな。」とK様。今日はイジリの言葉がないぞ。体調が悪いのか心配してしまう。
今日は奥様も一緒、潅水作業の最中です。K様の育苗ハウスにも寒冷紗が掛かっていました。外と比べると随分と涼しい。

では、圃場を見ていきましょう。

紅ほっぺ

章姫

左上が”紅ほっぺ”、右上が”章姫”です。今年もこの2品種の栽培です。

「まだ切り離したばっかりで色が淡いけどな。」とK様。
「去年よりいいんじゃない。」と私。
「おぉ、今んとこ今年はうまくいってる。」とK様。

普通に聞くとまるで「たまたま。」とか「偶然に。」とか聞こえるけれど、私が訪問する生産者にそんな方はいない。うまくいっている理由も、そうじゃない場合も、絶対に答えを導き出している。ただし、自然を相手にしているからこの後もずっとうまくいくとは考えていないし、楽観視なんてしていない。

ちょっと苗を比べてみましょうか。

前出、S様の”きらぴ香”は木がまるで針葉樹のように天に向かい尖っている感じだとするならば、K様とS様の”章姫”は広葉樹のように横に広がっています。K様の”紅ほっぺ”はその中間のような形になっています。
苗の状態で品種の比較をする機会は私も皆様もあまり無いでしょう。同一品種にて生産者様別で比較する機会も部会での巡回でもなければ見ることはできないでしょう。
たとえば、”かおり野”のように葉が極端に大きくなれば想像もつくことはありますが、なかなか葉の形までは覚えられないです。

果実でさえも見ただけでどの品種かは分からないものです。私などは外観を見て中を割って見て食べて食味と食感を確認して、たとえば三択問題みたいな形でやっと品種が分かるかな程度です。苗の時から品種によってその姿は違うのです。果実の形、色、食味が違って当然でしょう。

「タンソが無いだ。パネルの下にポットが転がってないだろう。」とK様。確かに、炭疽病(タンソ病)の苗を処分したあとポットは架台下に置いてあることが多いけど今日は1本もない。
なるほど、「今年はうまくいってる。」はここから来ているのか。

前回、ご紹介した高設採苗は苗が全て切り離されて親株だけが残っていました。
「もしもの時は親株に追肥してやれば”章姫”ならランナーはまだ出るから。」とのこと。「どうしても(高設採苗の場合は)クラウンが斜めになるから、これから葉掻きで直していくだ。」ともおっしゃいます。採苗方法が変わればそのあとの管理も変わってくる。キチンと理解していなければならないことです。

K様、”章姫”はこの後、夜冷庫にある程度入れる予定です。それが見たかったのですが今回タイミングが合わず皆様に紹介できませんでした。残念です。
言葉だけで分かりにくいですがK様の夜冷庫はトラックの冷蔵荷台を改造したものです。S様の夜冷庫よりやや小ぶり。そこにレールが設置してあります。また機会があれば写真にてご紹介したいです。

K様のハウスの写真でもS様のハウスの写真でも黒い潅水用のホースが映っていることが確認できると思います。このホース、結構頑丈で重いです。家庭用の庭で水撒きするホースとは全然違う。出る水の量(圧力)が大きいからです。先に1日2時間以上も潅水することも有ると書きましたがこのホースで水掛することは結構な体力が必要です。
たかが水掛と思われた方もいらっしゃったかもしれませんが、なかなかの仕事なんです。

実際、K様は底面潅水育苗も自身で考案されて使用されていた時期もありました。電磁弁を着けて流水方式で行っていました。溜め水方式の底面潅水では水温が気温に左右されてしまいます。極端な言い方では、お湯の中にいちご苗を漬けていることになります。それを嫌っての流水方式でした。

また、点滴チューブを架台に取り付け電磁弁を介して自動潅水をしていた時期もあります。下が当時の写真です。

前回の高設採苗架台が設置されていた場所です

パネルに点滴チューブを設置。パネルの漏斗形状でチューブの突出口の位置が多少ズレても問題がない。チューブは樹脂製のため温度によって伸縮する。

様々な方法で省力化できる部分は省力化してでも、こだわる部分があって手間が掛かるけれども自動化を止めて手潅水に戻っています。
変わらないことはただ一つ、アイポットを使用し続けていることです。私が出会う前、1995年からのユーザー様なのです。アイポット育苗を始めてからは他のポットを一切使っていない。25年間、4半世紀にも及ぶのです。
S様も同じ。1997年からずっとアイポットユーザー。その後、1度も他の育苗資材に浮気していない。この日記に登場して頂くだけの理由が私なりにあるのです。

K様、奥様。本日もありがとうございました。居心地が良くてまた2時間近くもお邪魔してしまいました。
夏場のハウスは本当に暑いです。何卒、ご無理をなさらぬように。また、お邪魔させてください。

2020年育苗編はこの辺りで終了です。
この後の続きがあるかどうかはまだ未確定です。機会があれば昨年書けなかったことを書いてみようと思います。
暑くて熱中症も怖いし、新型コロナウイルスもまだまだ終息には程遠い現状です。明るい話題が少ない時期ですが前を向いて進んで行きましょう。

それでは皆様、またお会いできることを楽しみにしております。
それまで しばらく さようなら。お元気で。