農業コラム

  • 日本農業
  • 2020年12月01日

【日本農業の現状と未来②】第1章:農業と人口 その2

第2回 日本の農業就業者数

皆様、こんにちは。暖かな日が続いていたけれどもやっぱり冬になれば寒いですよね。この連載も秋から冬、そして春と(打切りにならなければ)続いていきます。
コロナウイルスの感染拡大が気になる毎日です。何時、何処で感染してもおかしくはない状況だろうと思いますが、できる対策は全て実行してワクチン接種ができる日を待ちたいです。

しかし、第2回を読んでくださる方がいらっしゃるとは嬉しい限りです。感激です。
今回も楽しい内容ではありませんが最後までお付き合い、よろしくお願い致します。


第2回は農業就業者数について書いていきます。
今回も国が作成してくれた資料を基に筆者の思うところを書き綴って参ります。

日本の産業(3分類)と農業分野への就業者

出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「国勢調査結果」
   (https://www.e-stat.go.jp/)

単位がパーセントなので実態が分かりにくく申し訳ありません。
労働人口の比率を表していますが、読者の皆様の想像通りではないでしょうか。農業就業者がこれだけ減少したことを表しています(グラフ2-2)。
ただし、農業就業者数が0になることはないだろうことは予想できますし、大幅に増えることもないだろうと予想できます。
皆様も同じ考えではないでしょうか。

年齢別基幹的農業従事者数の推移と割合

出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「農林業センサス調査結果」
   (https://www.e-stat.go.jp/)

1960年の水準から見ると2015年はその従事者数が約15%まで減少していることが分かります(表2-3)。

実はこの資料、1960年から1980年までは合計と60歳以上の人数のみだったのです。
1990年から2000年までは合計、60-64歳、65-69歳、70-74歳、75歳以上でした。
2010年から2015年は合計、60-64歳、65-69歳、70-74歳、75-79歳、80-84歳、そして85歳以上での統計なのです。
分かりやすく1960年と同様の2種類の分別の調査結果に合わせました。
何を言いたいかと言うと1970年頃までは2015年の農業従事者がこんなに高齢化すると予想することは困難であった、だから60歳を一つの境に設定したのだろうと考えるのです。

1990年の統計では70-74歳 22.6万人、75歳以上 14.6万人。
2000年は70-74歳 44万人、75歳以上 30.5万人です。
1960年代には後継者が存在して代替わりが可能であったけれども、1990年代には後継者がなく高齢になっても農業を続けざるを得ない生産者がほとんどなのです(グラフ2-4)。
後継者がいないことが農業従事者の減少と高齢化に繋がることは皆が知っている事実です。

最近のデータを探してみました。

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h23_h
   /trend/part1/chap3/c3_3_02.html)
出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html#1)

すでに合計と65歳以上での統計になっています(表2-5)。

2019年の基幹的農業従事者の平均年齢は66.8歳です。こんな産業は他にはありません。
2015年の統計では80-84歳が18.6万人、85歳以上が8.5万人となっています。企業ではその年齢の正社員が存在することは無いでしょう。私が営業職の時にも同業者でも60歳代が最年長でした。今も変わりはないと考えます。

2009年に農林水産省が農業者モニター2,500人にアンケート調査をしています。以下はその中の一部を抜粋した文面です。

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h21_h/trend/part1/chap3/c3_05.html)

先にも述べましたが、後継者がいなければ自分自身が農地を守るしか方法がない。よって高齢になっても農業を続けるしかない。このことをアンケート結果が示しています。
また、自分自身の体験から農業を継いで欲しいとは思わない農業者が30%も存在しています。
こちらのアンケートの回収率は78.9%でした。よって回答者数1,972人のうち592人が「こんな収入も少ない、休みもない仕事を子供にはさせたくはない。」と考えているのです。

新規就農者

農業従事者の減少について述べてきましたが、では新規就農者はどうなっているでしょうか。

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h18_h/trend/1/t1_2_1_03.html)

新規就農者数推移です。1995年 4.8万人でしたが2000年 7.75万人、2005年 7.89万人と増加はしています(表2-6)。
ただし、この増加は「団塊の世代」が会社員での定年を迎えてその後就農した結果であることは容易に想像できます。
実際、増加している年代は50歳代以上が圧倒的多数なのです(グラフ2-7)。

近年、1年間での農業就業者人口は約10万人づつ減少しています(表2-5)。
新規就農者が年間約8万人も存在するのにどういうことなのでしょう。
たとえば2012年に60歳で就農したとします。2020年には68歳です。この農業者は果たして農業を続けているでしょうか。
また、若年層の就業者もずっと農業を続けているでしょうか。
新規就農者数の増加はその就農者の定着率と比例して増加しているのでしょうか?
推測ですが「NO」なのでしょう。

私自身の体験からするといちご栽培が高設化していく時代において、若年層が転職で就農するケースがありました。いちご農家になったのです。その時に静岡県の東部・中部・西部農林事務所に新規就農状況を教えていただくために出向いたことがあります。
農林事務所においても新規就農のデータは持っておられて丁寧に説明してくださったことを覚えています。
しかし「今年就農したからと言って来年農業やっているかは分からんよ。特に露地栽培の場合は参入しやすいけど、辞めることも(施設園芸に比べたら)簡単だからね。」とおっしゃっていました。
私が知り合ったいちご農家転職組の皆さんはそのほとんどがいまだ農業者ではあるけれど、長い年月、農業に携わることはそんなに簡単じゃない。上記アンケートにある通り休みも少ないし肉体的にも過酷です。
自営業と会社員との決定的な違いは経営だと考えています。会社員は営業は営業、経理は経理、製造は製造と分業ですが、経営についてはその会社の上層部のみが携わっているだけで、そのほとんどの会社員は経営を体験することはないでしょう。
経営できなければ自営業も会社も破綻してしまう。ましてや例えば営業しか経験していない会社員が生産や経理も行う自営業に転職することは「賭け」にも似ていると考えてしまう。
農業が継続できなくなって会社員に戻る場面は多々あるだろうと推測できます。


農林水産省のHPには農業教育についても掲載がありました(図2-9)。

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h21_h/trend/part1/chap3/c3_05.html)

これが現実なのです。弊社にも大学の農学部を卒業した社員がおります。
私は弊社の農業部門に籍を置いていますからすぐ身近に農学部卒業の社員がいます。

第2回もそろそろ終わりです。農業人口について書いてまいりました。
目新しいことは何も書いてないじゃないと言われればそれまでなのですが、今は農業の現状について分かる範囲で文章を書かせて頂きました。

ちょっぴり余談です。
私は実家が自営業でした。土・日曜日も店は開けていて月曜日になると友人が「週末に家族で〇〇に行ってきたよ。」と話す姿が羨ましかったです。「俺は絶対に勤め人になる。」と思いました。同じ思いを持っていた農家の子供がいても何ら不思議はありません。
全くの私見で申し訳ないのですが、その業種の構造が後継者になることを選ばない理由の一つなのだと考えています。


農業には様々な課題があります。
次回は第2章(第3回)です。よく話題となる「食料自給率」から日本農業を見てみましょう。
今回もあまりおもしろくない内容にお付き合いくださいましてありがとうございます。
ではまた次回、お元気で。

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