いちご日記

  • 2020年04月07日

最終回

「こだわり」は「頑固」とは違う

皆様、こんにちは。桜咲く春の到来です。
もうすぐ、ピカピカの一年生(古い)も入学式を迎えます。
皆様においては新年度から新しい職場への異動や新しいお仲間が増えたりと、慌ただしくも新鮮な時間をお過ごしのことでしょう。
さあ、コロナウイルスに負けずに元気に参りましょう。


今回が私が書く最後の「いちご日記」となります。今までご愛読いただきまして本当にありがとうございます。
この日記を書くことは私の中では想定外の出来事でした。
しかし、書くことが決まった瞬間に1年間のおおよそのスケジュール、構成は出来上がっていました。番外編までも予定していました。
そして栽培スケジュールが一回りしたら終了することも決めていました。最終回の文章もです。
いちご日記を書いていると昔の彼女と再会したらこんな気分になるのかなと思う時間を過ごしました。
約10ヵ月私の好きに書かせていただいたこと、会社にも感謝しています。
そしてなにより、この日記に登場していただいた生産者様の方々、本当にありがとうございました。
皆様のご協力なしではこの日記は成立しませんでした。感謝申し上げます。

さて最終回予告通り、あの方の圃場よりレポートします。

毎度お馴染みの静岡県藤枝市K様の圃場にお邪魔しています。本日もよろしくお願いいたします。
伺ったのは2月中旬です。朝晩は冷え込みが厳しいですが日中はお日様に当たれば結構暖かな陽気です。
ハウスの入り口にいたK様発見。お世話になります。あれ、今日は奥様不在の模様。
「今日は農協の用事に行ってる。」とK様。ちょっと残念。

さあ、取材スタートです。

まずは圃場の様子から

本日の収穫は終了したとのことでしたので、二人揃って休憩です。
K様「作文読んだぞ。○○(TS様)が印刷して持ってきてくれたっけ。」この日記のことです。
2月25日掲載「いちご日記」5年ぶりの訪問の回に登場していただいたTS様がわざわざ印刷して持ってきてくれたようです。ちょっと恥ずかしい。
この日記に登場していただいている生産者様は、実はこの日記を読んでいない方が多いです。
私は「いちご日記」の取材と断って訪問していますし、このページも見せてはいるのです。
分かっていることをわざわざスマホやパソコンを開いてみる必要はないと言われればそれまでなのですが。
K様、「なかなかいい作文だっけ。」お世辞ですね。

天敵

K様、天敵も利用されています。
あれ、TS様とは違うボトルだぞ。どこが違うんだ?調べました。
TS様が使用されていた天敵はチリカブリダニ。K様はミヤコカブリダニです。ダニの種類が違います。
チリカブリダニはハダニしか食べられないスペシャリスト。ハダニがいない状況では生きていけないため、ハダニの発生を確認してからの使用になるようです。
一方、ミヤコカブリダニはハダニ以外の微小昆虫や花粉なども食べて生活できるため、ハダニの発生前から使用してハダニを待ち伏せして捕食することができるようです。
この2種類を同時に放飼する方法もあるようです。
実はこの時点で私もミヤコカブリダニは知らなかったのです。

K様のお父様もいちご生産者様でした。なんと昭和10年(1935年)からいちごを栽培されていたとのことです。
85年間、いちご栽培を続けておられる。K様が生まれる前からです。
当時はビニールハウスは無いでしょうし、勿論、暖房機だってない。露地生産だったのでしょう。
「冬場は菰を被せた記憶がある。」とK様。
一体どのような栽培方法だったのでしょか?ちょっと想像もつかないですね。

いちごのパック詰め

私が写真を撮影している間にK様、さっと圃場のいちごをパックに詰めてくださいました。
あっという間に2パックも。やっぱり、プロは早い。これは2Lサイズですね。
尖った方向が少し斜めになって入っています。同じ2Lでも真ん中の列に少し大きめのいちごを詰めて、全体がふっくらした感じに見えるようにしています。
美味しい食べ物は見た目も美しくて魅力的なのがいいですよね。

いつも、お土産ありがとうございます。
日記には初めて書くのですが、収穫時期の取材ではどの生産者様を訪問してもお土産のいちごを頂きます。嬉しい限り。

「紅ほっぺ」の規格表

ホールパックが3種類、デラックス3種類、レギュラーパック3種類の計9種類となります。
このパックが入る段ボール箱が各1種類あります。
私がいちご関係の仕事を始めた頃は、ちょうど「章姫」が普及し始めたころでホールパックとレギュラーパックしかありませんでした。
「きらぴ香」の規格構成は「紅ほっぺ」とほぼ同じなのですが、デラックス系のパックが「紅ほっぺ」のそれよりも大きいため、段ボール箱は2パックの専用箱になります。
複数の品種を栽培されている生産者様はその品種の分のパックや段ボール箱を用意しなくてはなりません。
また、JAの集出荷場の施設も段ボールサイズに適合するような改造が必要になってきます。
時代の変化と共に消費者のニーズも変わりますから、その対応は努力が必要となります。
他の産業と比較して、農業は機器も考え方も後れていると感じていらっしゃる方は多いでしょう。
現実は目に触れる機会が少ないだけで、時代とともに変化しているのです。

K様、ありがとうございました。
この4月でお付き合いは25年目となります。息子よりも長いお付き合いをさせていただいております。
まだ若かった頃は、身だしなみや喋り方など色々注意されたこともありましたし、困りごとの相談に乗っていただいたりもしました。
失敗しては怒られながらも私がいちごの仕事を続けてこられたのは、K様に助けていただいた部分が大きいです。
この日記は今回で終了となりますが、また寄らせていただきます。
本当にありがとうございました。

最終回にあたって

最終回はこだわりについて考えてみました。
もちろん、いちごについてです。


私は弊社にて農業関係の生産・物流資材の営業を25年ほどさせていただきました。
その間にいちごの生産者の方々と多くの話をする機会がありました。
また、弊社と一緒に資材を販売してくださる販売会社の方々、いちご栽培の指導機関の方々、学者の先生やいちごそのものの販売に携わる人たちともいろいろな話をしました。
今もまた、生産者様の圃場にお邪魔して勉強させていただいております。
皆様にはお世話になりました。本当にありがとうございます。


皆様、いろいろなこだわりがあります。その中でいちご栽培について書いてみます。
企業でいちご栽培をする方々を除いて、生産者様=農家の方々は一国一城の主です。
いちご栽培に関わらず、生産量や労力で不利なことや困難なことを承知の上で譲れない部分があります。妥協しないためのこだわりを持っていらっしゃることが多いです。
味にこだわるために土作りをしたいから高設栽培を導入しない。
苗はやはり高冷地育苗でなければならない。
丸形のハウスでなくてはいけない。など、様々な考え方があります。

弊社の商品を販売するにあたり、導入しない理由もいろいろと聞いてきました。
しかし、弊社の農業部門において、いちご資材は販売の中心となった時代もあったのです。
私は弊社の商品、アイポットや栽培槽は商品力だけでなく、生産者の方々の考え方が製品のコンセプトと合致したから販売ができたのだと考えています。

静岡では「章姫」から「紅ほっぺ」。これからは「きらぴ香」になるのかというところ。
栃木は「女峰」から「とちおとめ」。「スカイベリー」はどの程度まで増えるのか。それとも違う品種が出来てくるのか。
福岡も「とよのか」から「あまおう」。
全国各地で品種が変わっていくのがいちごです。
生産者の方々は品種が変わるたびに栽培方法も変わることが多いので、柔軟な考え方をしていかなくてはなりません。
私自身の体験からも永年作物の生産をされている農家さんよりも、いちごの生産者様の方々の方が弊社の新しい商品の説明を聞いてくださると感じています。

こだわりがある中でもこの製品は使えると考えていただけたからアイポットも販売できたのだと思います。
その理由が省力化であることが大きいとも考えています。
アイポットも高設栽培も省力化を目指した商品であり、使うことで収穫量の増加や秀品率が上がるとか糖度が高くなることはありません。

「思い切って高設栽培にして良かった。していなかったら75歳までいちごを作ることはできなかっただろう。」
本日紹介させていただいた藤枝市K様の言葉です。涙がでるほど嬉しいお言葉でした。
いちごに関わる仕事をして良かった。

こだわりは個々の匠の技で守っているのではないでしょうか。

弊社は製造業です。いちごに関しては素人です。そんな素人の話を聞いていただいて、更に製品の購入までしていただけることは幸せなことです。
こだわっていちごを作ってもまだ満足がいかない方もいらっしゃるでしょう。
今現在、栽培している品種がベストではないと考えておられる方々は新品種を求めています。
新品種の開発は研究機関だけが行っているわけではありません。
個人で行っている方もたくさんいらっしゃいます。
代表は「章姫」です。故萩原章弘氏が作られた品種です。静岡いちごの一時代を担った品種です。
そして今この時も新品種育成に取り組んでおられる生産者様もこの日記に登場していただきました。
静岡市のK様です。この連載の中でも紹介させていただきましたが、K様は「紅かおり」を育成され、品種登録作業中です。


こだわって更にこだわって自分のいちごを作る。アグリビジネスにはなりにくいですね。
効率化は必要なことです。私も「改善」を仕事のテーマとしてきた期間は長いのです。
作業改善提案書も何度も何枚も作成しました。重労働の軽減を行いながら生産物の収量増加や品質UPも同時に考えていくのはとても難しいことです。

我々は省力化の提案の中から新製品を開発しております。
これからも弊社は微力ながらでも農業界に協力できればいいなと考えています。


今回は字ばかりであまり面白くない回となってしまいました。
「お前の考えなど読んでも意味がない。」と思われた方、ごめんなさい。

最後になります。皆様、約10ヵ月間のご愛読ありがとうございました。本当に感謝申し上げます。
また、機会があればこの「アグリコネクター」の中で文章を書いてみたいと思います。
これからも矢崎化工と「アグリコネクター」をどうぞよろしくお願いいたします。

Fin

おまけ
我が家のいちごらしきモノ。